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■【補論】環境問題 134ページ
◆高度経済成長期の公害
1960年代後半、日本は高度経済成長のツケで、工場の煤煙や汚染水などによって深刻な公害がひき起こされました。新聞に公害問題の記事がのらない日はほとんどなく、「公害列島」ともいわれました。1970年代に入ってからは、車による大気汚染や道路公害も深刻化しました。いずれも、利潤第一主義のために企業が、環境保護を考慮せずに、利益の追求に走ったためにひき起こされたものです。
◆環境破壊がひき起こされる理由
身近な公害問題だけでなく、森林破壊や砂漠化、プラスチックの海洋汚染などの環境問題が、地球的規模でひき起こされていますが、環境破壊が引き起こされるのは、ふたつの理由があります。ひとつは、人間の認識がつねに有限で、限りあるものだからです。そのため、「一次的」には自然の開発に成功したとしても、「二次的、三次的」にはその成功を「帳消し」にしてしまうほどの環境破壊をひき起こすからです。もうひとつは、資本主義の経済活動がもっぱら利益を追求する利潤第一主義によっておこなわれているからです。資本の論理は、利潤があがれば、環境破壊につながることが分かっていても、法的規制がなければ自然を収奪し、破壊します。
◆地球温暖化
工業化のなかで、二酸化炭素(CO2)などが増大することによって温暖化が深刻化するなかで、1988年に「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が設立され、「気候変動枠組条約締約国会議(COP)」も開催されて、国際的な取り組みが始まりました。IPCCの報告でも、温暖化はほぼ「人為的」にひき起こされたものであることが明らかになっています。重化学工業は膨大なエネルギーを消費しますが、そのエネルギーを石炭・石油などの化石燃料に頼っているからです。
地球の平均気温が、産業革命前から2℃以上あがれば、不可逆的な気候変化をひき起こすといわれています。そのため、2015年のCOP21の「パリ協定」では、平均気温の上昇を「2℃以下」に抑える「目標」と「1.5℃以下」に抑える「努力目標」を掲げ、今世紀後半に「排出量実質ゼロ」をめざすことが合意されました。しかしアメリカのトランプ大統領は「パリ協定」からの離脱を表明し、日本政府も、石炭火力発電所の建設や輸出に力を入れ、脱炭素化の取り組みの足を引っ張っています。そして世界全体の排出量削減目標もまだまだ不十分です。これに対して、スウェーデンのグレタ・トゥンベリさんら世界中の若者が声を上げ、国際的に「気候危機」への取り組みの強化が訴えられています。
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