基礎理論コース QRコード収録項目

第6章 現代の資本主義

第一部 哲学 第2章 第3章
第二部 経済 第4章 第5章 第6章(このページ)
第三部 階級闘争論 第7章 第8章 第9章

■【補論1】日本における独占段階の資本主義の特徴
■【補論2】電力産業の独占形成と金融資本
■【コラム】独占資本主義と過剰資本
■【コラム】ブレトンウッズ体制

【補論1】日本における独占段階の資本主義の特徴 225ページ

 現代の日本は、世界有数の独占段階の資本主義国です。しかし、日本国憲法のもとで、戦争を放棄し、対外的な軍事行動を禁止していますので、帝国主義国となりうる法体系をもっていません。現実にも、日本は植民地をもっていませんし、対外的な軍事行動によって他民族を抑圧することができません。

 日本は高度に発達した独占段階の資本主義国ですが、その一方で日米安保体制(日米同盟)のもとで、政治的にも軍事的にも経済的にもアメリカに従属しています。同時に、支配層は体制の延命と安定のために、自らの意思で積極的に対米従属を深めようとしています。この間、日米同盟強化路線のもとで明文改憲が追求され、アメリカの戦争に協力する自衛隊の海外派兵が拡大されてきました。安保を廃棄し、憲法の平和原則にもとづいた平和外交をすすめていくことが求められています。

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【補論2】電力産業の独占形成と金融資本 227ページ

 電力産業をはじめ、電話、ガス、水道などの産業では地域独占という形態が形成されています。これらの産業で独占が形成され、維持されている主な理由は、①巨額の投資資金が必要なこと、②複数の企業の場合、設備投資が重複するので社会的に不効率になること、③社会生活基盤を支えるものとして、当該地域内で普遍的な供給をおこなう必要があること、④それゆえ、価格などを社会的に規制する必要があること、などです。

 電力会社は、地域独占の民間企業として存在しています。民間企業であるため、電力料金の改定をつうじて、一定の利潤を保証する体制が形成されています。利潤が多くなれば電力料金を引き下げ、減少すれば料金を引き上げるなどしてきました。つまり、電力会社はコスト削減をしても料金を引き下げられるだけなので、コストを削減する理由がないのです。逆に、高いコストを引き受けることで、金融資本に収益を与える企業として存在してきました。巨額の設備投資のための資金を金融資本から調達し、多額の利子収入を提供してきました。さまざまな発電所や高圧送電線網、電線、電柱など、非常に幅広い分野で資材を調達し、それらを生産する大企業に収益の場を提供してきました。さらに、国家によって保証された利潤をもとに、高い株式配当をおこなって金融資本の高利益を支えてきました。

 明治以来、数多くの電力会社が登場し、同じ地域内でも複数の会社が乱立して電柱や電線をそれぞれがつくって競争をしていました。関東では、東京電灯、鬼怒川水力電気、日本電灯などが大手で、それ以外にもたくさんの電力会社がありました。現在、東日本が50Hz〈ヘルツ〉、西日本が60Hzと商用電源の周波数にちがいがあるのは、その当時の有力な会社が別々に発電所をつくって送電してきたことに始まります。こうした多くの会社は、1938年に制定された国家総動員法のもとで国策企業としての独占企業(日本発送電という特殊法人と9つの配電会社)へと統合されました。そして戦後において地域ごとに分割されて現在に至っています。現在、電気事業連合会加盟の電力会社のうち、沖縄電力を除く9社はこの日本発送電がもとになっています。

 また、対米従属のもとで石炭・火力から石油・原子力へとエネルギー転換を強いられてきたことも電力産業の特徴です。

 さらに「原発利益共同体」の問題も電力産業の特徴です。2011年3月11日の東日本大震災に伴う東京電力の福島第一原子力発電所の事故をきっかけにして、日本経団連も関与する「原発利益共同体」ともよばれている利権集団の存在が明るみになってきています。このなかで第2次安倍政権は、脱原発を願う国民の声を無視し、原発の再稼働や輸出を推進しようとしています。

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【コラム】独占資本主義と過剰資本 221ページ

 独占企業は、独占価格を維持することで高い利潤率を実現しています。もし仮に、ある産業部門の独占企業が手元にある貨幣資本をすべて当該産業部門に投資したとしましょう。投資によって独占企業の生産能力は拡大し、生産量が拡大することになります。このとき、社会の需要が生産量の伸び以上に大きく伸びなければ、生産量が需要量を上回ることになり、価格を低下させなければすべての生産物を売ることができません。結果的には、生産量を増やしても価格が低下することで、投下資本全体で見た利潤率は低下します。また、価格低下が大きければ、利潤量も減少する可能性がでてきます。

 したがって、独占企業は独占利潤を前提にした利潤率の予想を立てますが、利潤率が下がると思えば、その産業部門で投資しない方がいいことになります。このとき、過剰資本が存在するというのです。過剰資本の「過剰」という言葉の意味は、独占的な高い利潤率から判断して、その部門で投資できない(投資すべきではない)、つまり、「余っている」ということです。

 このような過剰となった資本は、独占的銀行資本をつうじて他の産業部門に融資されたり、海外に投資されたりしています。現代では、この過剰な貨幣資本こそが国際的な投機マネーの源泉です。こうした投機を抑えるためには、たんに投機にたいする規制をかけるだけでは不充分です。発生するしくみから変えていかなければなりません。

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【コラム】ブレトンウッズ体制 224ページ

 第2次世界大戦後の世界経済秩序は、ブレトンウッズ体制(IMF+GATT体制)とよばれてきました。アメリカは、第2次世界大戦後の世界経済を主導するために、戦争中の1944年7月、ニューハンプシャー州ブレトンウッズで連合国通貨金融会議を主催し、連合国44か国はアメリカ提案にもとづいたブレトンウッズ協定を締結しました。この協定で設立された国際金融機関が国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)と国際復興開発銀行(IBRD:International Bank for Reconstruction and Development、現在は略して世界銀行[World Bank]とよばれている)です。

 IMF体制は、アメリカのドルを基軸通貨とする固定相場体制で、その固定相場体制は1971年のアメリカによるドルと金の交換停止(ニクソン・ショック)によって崩壊するまで継続しました。日本の円は、1ドル=360円でずっと固定されていました。

 GATT(General Agreement on Trade and Tariffs、関税と貿易にかんする一般協定)は、自由貿易をすすめるために1948年にスタートした暫定的な国際機構で、1995年にWTO(World Trade Organization、世界貿易機関)へと再編・機能強化されました。

 ブレトンウッズ体制は、アメリカ主導のもとで形成された、IMF、GATTを車の両輪とし、自由貿易をすすめてきた世界経済体制のことです。

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