就任にあたってのご挨拶

労働者教育協会会長・勤労者通信大学学長  五十嵐 仁

 このたび、山田敬男前会長・学長の後をうけて労働者教育協会の会長と勤労者通信大学の学長に就任いたしました。18年ぶりの交代になります。就任にあたりまして、ひとことご挨拶させていただきます。

 

 現在の世界と日本は、たいへん複雑で流動的な状況となっております。新しい政治と社会に向けての変革のプロセスが始まり、政治転換の可能性も高まっており、先を見通して進路を切り拓いていく知的能力が求められています。労働者教育協会は、この点で大きな役割を果たせるのではないでしょうか。

 まず、これまで同様、二つの基本的な役割を果たしたいと思います。第1に、働く人々の階級的自覚を高め、困難な状況にある労働運動を担うことのできる強力で魅力的な活動家を養成することです。第2に、幅広い市民の知的欲求に応え、民主的な市民社会を支えることのできるエネルギー溢れる市民活動家を育成することです。

 加えて、日本社会の変化によって新たな役割の発揮が求められているように思われます。その一つは、インターネットやSNSなどに真偽不明の情報が満ち溢れ、「ポスト真実」と言われるような時代における情報リテラシー(判断・理解能力)の向上です。何が真実かを見極める目を培う、お手伝いができるのではないでしょうか。もう一つは、文科省の教科書検定や教育内容への介入によって歪められてきている学校教育を補完することです。労教協や勤通大の活動は社会教育の一環であり、この点で学習教育運動についての新たな役割のとらえ直しが必要ではないでしょうか。

 旧来からの活動の継続と発展を図るだけでなく、環境変化によって生じている新たな役割の発揮に向けても、その先頭に立つ決意です。これまでと同様、みなさまのご支援とご協力をお願いいたします。(2025年7月)

 

労働者教育協会のご紹介

 労働者教育協会(労教協)は、1952年10月に創立され、学習教育運動の全国組織として重要な役割をはたしてきました。私たちがすすめている学習教育運動の目的は、広範な労働者と国民の「階級的自覚の形成と発展」に寄与するため、「科学的社会主義の立場に立って、哲学、経済学、労働運動をはじめ人民運動についての基礎的理論」や「内外の政治・経済情勢の特徴」などを教育・普及することにあります。

 具体的な運動として、地域で学習組織主催の労働学校が開催され、労教協の事業として月刊誌『学習の友』を発刊し、勤労者通信大学(勤通大)を毎年開校しています。

 労働学校は、戦前の「大正デモクラシー」の時代からの伝統があり、戦後も労働者教育で極めて大きな役割を果たしてきました。労働学校の魅力は多くの仲間と交流しながら、人間的な生き方の模索と結びつけて、ものの見方や社会・経済のしくみを学ぶことができるところにあります。

 『学習の友』は、1953年に創刊され、多くの仲間と学習教育運動の日常的接点になっています。職場や地域の状態、仲間の要求、さまざまなたたかいと結びつけて情勢や基礎的理論などをわかりやすく学ぶことができます。

 勤通大は、1968年に創設されました。開校コースは、社会科学を初めて学ぶ仲間を対象とする入門コース、科学的社会主義の基礎理論を学ぶ基礎理論コース、労働組合のそもそも論を学ぶ労働組合コースの3つです。通信制ですから独習が大切ですが、一人で学ぶことは簡単なことではありません。職場や地域に大きさや形にとらわれない学習会を開き、話し合い、励まし合い、交流をしながら基礎理論を学ぶ運動を推進しています。

 学習教育運動はあなたの運動への参加を心待ちにしています。

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