
【リニューアルした基礎理論コースで学びましょう】 |
①学習の出発にあたって |
②なにを学ぶか |
③どのように学べばいいか |
【解説】新・基礎理論コースの特徴と魅力 |
①ものの見方・考え方 |
②資本主義経済と暮らし |
③たたかいと社会進歩 |
【基礎理論コース テキストの目次】 |
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★ 1 学習の出発にあたって
基礎理論コースは、情勢やたたかいの新しい展開、学問の理論的発展などを踏まえ、2020年度にテキストをリニューアルし、再出発しました。基礎理論コースは、科学的社会主義の基礎理論をもう一歩突っ込んで体系的に学ぼうとしているみなさんを対象としています。 日本の経済をみると、長期の停滞をつづけながら、大企業や富裕層は空前の利益をあげ、他方で、労働者や国民は低賃金、雇用不安、社会保障の負担増などによって、きわめて苦しい生活を余儀なくされています。いくら一生懸命働いても、生活が良くならないのです。ちょっとおかしいと不満をのべると、それは「自己責任」であって、努力が足りないあなたが悪いのだといわれてしまいます。
政治では、アメリカのいいなり、国民不在の強権政治のもとで、公文書の改ざん、データのねつ造などウソと隠蔽が横行し、モラルの劣化がすすんでいます。にもかかわらず、長期にわたって専制政治がつづくと、どうせ世の中はこんなもので、政治は変わらないというあきらめと無関心が国民のなかに生まれやすくなってきます。 さらに社会の状況をみると、競争と効率性が強調され、労働者や国民が分断され、職場や地域の集団的関係が壊されています。人びとはバラバラにされがちで、本音が話せず、表面的なうわべの関係におかれています。こうなると友達ができにくく、人びとの孤独感が深まっていきます。どうせ人間は1人ぼっちで、連帯などというのはきれいごとにすぎないと人間不信の気持ちも生まれます。
このように、経済、政治、社会などあらゆる領域で、矛盾が深刻になっていながら、「自己責任」論が横行し、政治的あきらめと無関心、人びとの分断と孤独感がひろがることによって、世の中の矛盾の根本的な解決が先延ばしにされています。だからこそ、「なぜこのようなことが起きるのか」「どうすれば解決できるのか」「人びとのつながりをとりもどすにはどうしたらよいのか」という問題が提起されているのです。
この問題を考えるには、基礎理論の学習が必要です。世の中のできごとを表面的にバラバラにみるのではなく、どのように関連しており、そのなかでなにが本質的な要因であるかをきちんとつかまなければなりません。いま、私たちのまわりには情報が満ちあふれています。油断していると、誤った情報の影響を知らないあいだに受けていることがあります。なにがウソで、なにが真実かを見抜く科学の目を鍛えなければなりません。
忙しさに振り回され、科学の目をもつ努力を怠ると、貧困と雇用不安を「自己責任」にされたり、専制政治や政治の腐敗をあきらめたり、人間の連帯に絶望的になったりする危険性が生まれてきます。そのためにも基礎理論を学習し、物事の本質をとらえるものの見方、考え方を身につけることが必要です。
いま矛盾だらけの世の中を何とか立て直そうという運動が活発になっています。2015年の安保関連法反対の運動が大きな節目になり、「市民と野党の共闘」というこれまでになかった新しい国民的共同が大きく前進しています。憲法第9条の改憲や社会保障の改悪が現実問題になっており、これを辞めさせるために政治を根本から変えることが求められています。「市民と野党の共闘」の運動を本格的に発展させ、野党連合政権をつくり、憲法を本格的に活かした新しい日本の実現が期待されはじめているといえます。
そのためにも、労働運動の奮闘が重要な意味をもっています。職場や地域からこの「共闘」を支持する運動や世論を盛り上げる必要があります。ところが職場は、長時間過密労働のなかで、きわめてきびしい状況におかれており、組合活動もうまくいっておらず、政治的問題をとりあげるのは無理という声が聞こえそうです。そのなかで、職場と組合活動をなんとかしようと思っている人もたじろいでしまうかもしれません。こうした職場のきびしさをどう考えるか、職場や地域と政治や社会の関連をどう見るのか、そのなかで運動の再生と前進のためになにが根本的な課題なのかを考える必要があります。
私たちがどうしたらよいかを判断する場合、自分だけの経験に頼らず、多くの仲間の経験、世界中の人びとの経験、これまでの歴史的な運動の経験と教訓などに学ぶことが重要です。そのためにも基礎理論の学習が大事です。理論とは、人間のさまざまな実践の積み重ねを総括し、教訓と法則を体系的に整理したものといえます。したがって、私たちが人間らしく生きるには、それを妨げるものとたたかうには、人類がこれまで蓄積してきた実践の総括といえる理論を学ばなければなりません。たんに物知りになるというのではなく、生きるための指針、行動の指針になる科学的な理論の学習が求められています。勤通大は、この科学的な最良の理論こそが科学的社会主義の基礎理論だと考えています。
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★ 2 なにを学ぶか
私たちがこれから基礎理論コースで学ぶものは、科学的社会主義の基礎理論です。科学的社会主義の理論は、19世紀にカール・マルクスとフリードリッヒ・エンゲルスがつくりあげたものです。
19世紀のヨーロッパで資本主義の矛盾と労働者のたたかいが高まるなかで、マルクスらの科学的社会主義が生まれました。彼らは、それまで人類が生みだした知的財産ともいえる理論や思想と格闘し、その成果を継承し、発展させた科学としての社会主義の理論を創造したのです。一言でいえば、「開かれた創造的な理論」といえます。その特徴は、資本主義社会の現実をありのままにとらえ、その本質的な法則を明らかにしたことにあります。労働者の長時間労働や過労死の原因はなにか、富と貧困の格差が拡大する原因はなにか、この資本主義の現実を変革するにはなにが必要か、などを明らかにしたのです。さらに、マルクスらは、人口の圧倒的多数になりつつある労働者階級が、生産活動をになうだけでなく、たたかいと学習や教育をとおして大きく成長し、資本主義社会を変革することができると主張しました。
そして、資本主義の変革によって生まれる社会が、社会主義の社会です。マルクスらのいう社会主義とは、働く人間が社会の主人公となって、すべての個人の自由な発達をめざし、貧富の格差をなくす平等を追求し、そのためにすべての人が協力しあう協同社会です。
科学的社会主義とは、このような人間解放のための理論です。この理論は、人間・社会・自然の現実をありのままにとらえ、その運動と発展の姿をとらえる「ものの見方・考え方」をもっています。それが哲学です。そして資本主義社会を分析して、その矛盾を明らかにして、変革の方向を解明する経済学をもっています。さらに、歴史の発展の法則をとらえ、労働者階級を中心とした民衆のたたかいこそが未来社会をきりひらくという「階級闘争の理論」を主張します。このテキストでも、第1部ものの見方・考え方(哲学)、第2部資本主義経済と暮らし(経済学)、第3部たたかいと社会進歩(階級闘争論)となっています。
マルクスやエンゲルスが描いた19世紀資本主義社会の現実は、21世紀の日本でも世界でもあらわれています。だからこそ、かれらの著作がいまでも世界中で読まれているのです。それほど、資本主義社会の矛盾が深刻なのです。今日の労働者や市民がぶつかっている諸問題、時代の課題を考えるうえで、かれらの理論と思想はいまでも有効です。時代をこえるたいへん魅力的な思想家たちでした。
マルクスとエンゲルスは、現実とたたかい、人びとの解放を願いながら、問題の本質を深く考え、解決の方向をあきらかにする態度を一貫してとっています。そこには真理を究明しようとする「科学の目」と、困難な現実を打開しようとする「変革の精神」が満ちあふれていたのです。私たちが科学的社会主義の基礎理論を学ぶうえで大切なことは、かれらの個々の言説を絶対化するのではなく、この「科学の目」と「変革の精神」を吸収することにあります。9か月の学習で、ぜひこの科学的社会主義の真髄ともいえる「科学の目」と「変革の精神」を学びとっていただきたいものです。
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★ 3 どのように学べばよいか
勤通大の学習は、計3回のテストと通信を使い、約9か月間とりくみます。勤通大に入学されたみなさんは、仕事や活動などで忙しすぎて学習する時間がとれないと悩んでいる方もおられるにちがいありません。いまの世の中、学習によって「科学の目」を鍛え、みずからが確信をもつことが重要です。学習する時間をとること自体がたたかいでもあります。学習する計画を立て、毎日、あるいは毎週、少しでも学習する時間をとり、それを習慣化することが必要です。
勤通大は独習が大切ですが、同時に集団学習がきわめて重要になっています。職場や地域の受講生たちと、話し合い、交流しながら学習することが大きな効果を発揮します。集団学習のなかで、励まし合い、支え合ってこそ学習の内容をたしかなものにするにちがいありません。集団学習の仲間がいないと思っても、近くの学習組織や労働者教育協会に連絡をとれば、受講している仲間が紹介され、さまざまなサポートを受けることができます。
マルクスは、「学問にとって平坦な大道はありません。そして、学問の険しい小道をよじ登る労苦を恐れない人々だけが、その輝く頂上にたどりつく幸運にめぐまれるのです」(『資本論』序文)とのべています。みなさんが、この「山登り」に挑戦されることを心から期待いたします。
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