勤労者通信大学

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通信制の「学校」です。愛称は「勤通大」

リニューアルした基礎理論コースで学びましょう

テキスト
【リニューアルした基礎理論コースで学びましょう】
  ①学習の出発にあたって
  ②なにを学ぶか
  ③どのように学べばいいか
【解説】新・基礎理論コースの特徴と魅力
  ①ものの見方・考え方
  ②資本主義経済と暮らし
  ③たたかいと社会進歩
【基礎理論コース テキストの目次】
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  1 学習の出発にあたって  


 基礎理論コースは、情勢やたたかいの新しい展開、学問の理論的発展などを踏まえ、2020年度にテキストをリニューアルし、再出発しました。基礎理論コースは、科学的社会主義の基礎理論をもう一歩突っ込んで体系的に学ぼうとしているみなさんを対象としています。  日本の経済をみると、長期の停滞をつづけながら、大企業や富裕層は空前の利益をあげ、他方で、労働者や国民は低賃金、雇用不安、社会保障の負担増などによって、きわめて苦しい生活を余儀なくされています。いくら一生懸命働いても、生活が良くならないのです。ちょっとおかしいと不満をのべると、それは「自己責任」であって、努力が足りないあなたが悪いのだといわれてしまいます。

 政治では、アメリカのいいなり、国民不在の強権政治のもとで、公文書の改ざん、データのねつ造などウソと隠蔽が横行し、モラルの劣化がすすんでいます。にもかかわらず、長期にわたって専制政治がつづくと、どうせ世の中はこんなもので、政治は変わらないというあきらめと無関心が国民のなかに生まれやすくなってきます。  さらに社会の状況をみると、競争と効率性が強調され、労働者や国民が分断され、職場や地域の集団的関係が壊されています。人びとはバラバラにされがちで、本音が話せず、表面的なうわべの関係におかれています。こうなると友達ができにくく、人びとの孤独感が深まっていきます。どうせ人間は1人ぼっちで、連帯などというのはきれいごとにすぎないと人間不信の気持ちも生まれます。

 このように、経済、政治、社会などあらゆる領域で、矛盾が深刻になっていながら、「自己責任」論が横行し、政治的あきらめと無関心、人びとの分断と孤独感がひろがることによって、世の中の矛盾の根本的な解決が先延ばしにされています。だからこそ、「なぜこのようなことが起きるのか」「どうすれば解決できるのか」「人びとのつながりをとりもどすにはどうしたらよいのか」という問題が提起されているのです。

 この問題を考えるには、基礎理論の学習が必要です。世の中のできごとを表面的にバラバラにみるのではなく、どのように関連しており、そのなかでなにが本質的な要因であるかをきちんとつかまなければなりません。いま、私たちのまわりには情報が満ちあふれています。油断していると、誤った情報の影響を知らないあいだに受けていることがあります。なにがウソで、なにが真実かを見抜く科学の目を鍛えなければなりません。

 忙しさに振り回され、科学の目をもつ努力を怠ると、貧困と雇用不安を「自己責任」にされたり、専制政治や政治の腐敗をあきらめたり、人間の連帯に絶望的になったりする危険性が生まれてきます。そのためにも基礎理論を学習し、物事の本質をとらえるものの見方、考え方を身につけることが必要です。

 いま矛盾だらけの世の中を何とか立て直そうという運動が活発になっています。2015年の安保関連法反対の運動が大きな節目になり、「市民と野党の共闘」というこれまでになかった新しい国民的共同が大きく前進しています。憲法第9条の改憲や社会保障の改悪が現実問題になっており、これを辞めさせるために政治を根本から変えることが求められています。「市民と野党の共闘」の運動を本格的に発展させ、野党連合政権をつくり、憲法を本格的に活かした新しい日本の実現が期待されはじめているといえます。

 そのためにも、労働運動の奮闘が重要な意味をもっています。職場や地域からこの「共闘」を支持する運動や世論を盛り上げる必要があります。ところが職場は、長時間過密労働のなかで、きわめてきびしい状況におかれており、組合活動もうまくいっておらず、政治的問題をとりあげるのは無理という声が聞こえそうです。そのなかで、職場と組合活動をなんとかしようと思っている人もたじろいでしまうかもしれません。こうした職場のきびしさをどう考えるか、職場や地域と政治や社会の関連をどう見るのか、そのなかで運動の再生と前進のためになにが根本的な課題なのかを考える必要があります。

 私たちがどうしたらよいかを判断する場合、自分だけの経験に頼らず、多くの仲間の経験、世界中の人びとの経験、これまでの歴史的な運動の経験と教訓などに学ぶことが重要です。そのためにも基礎理論の学習が大事です。理論とは、人間のさまざまな実践の積み重ねを総括し、教訓と法則を体系的に整理したものといえます。したがって、私たちが人間らしく生きるには、それを妨げるものとたたかうには、人類がこれまで蓄積してきた実践の総括といえる理論を学ばなければなりません。たんに物知りになるというのではなく、生きるための指針、行動の指針になる科学的な理論の学習が求められています。勤通大は、この科学的な最良の理論こそが科学的社会主義の基礎理論だと考えています。

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  2 なにを学ぶか  


 私たちがこれから基礎理論コースで学ぶものは、科学的社会主義の基礎理論です。科学的社会主義の理論は、19世紀にカール・マルクスとフリードリッヒ・エンゲルスがつくりあげたものです。

 19世紀のヨーロッパで資本主義の矛盾と労働者のたたかいが高まるなかで、マルクスらの科学的社会主義が生まれました。彼らは、それまで人類が生みだした知的財産ともいえる理論や思想と格闘し、その成果を継承し、発展させた科学としての社会主義の理論を創造したのです。一言でいえば、「開かれた創造的な理論」といえます。その特徴は、資本主義社会の現実をありのままにとらえ、その本質的な法則を明らかにしたことにあります。労働者の長時間労働や過労死の原因はなにか、富と貧困の格差が拡大する原因はなにか、この資本主義の現実を変革するにはなにが必要か、などを明らかにしたのです。さらに、マルクスらは、人口の圧倒的多数になりつつある労働者階級が、生産活動をになうだけでなく、たたかいと学習や教育をとおして大きく成長し、資本主義社会を変革することができると主張しました。

 そして、資本主義の変革によって生まれる社会が、社会主義の社会です。マルクスらのいう社会主義とは、働く人間が社会の主人公となって、すべての個人の自由な発達をめざし、貧富の格差をなくす平等を追求し、そのためにすべての人が協力しあう協同社会です。

 科学的社会主義とは、このような人間解放のための理論です。この理論は、人間・社会・自然の現実をありのままにとらえ、その運動と発展の姿をとらえる「ものの見方・考え方」をもっています。それが哲学です。そして資本主義社会を分析して、その矛盾を明らかにして、変革の方向を解明する経済学をもっています。さらに、歴史の発展の法則をとらえ、労働者階級を中心とした民衆のたたかいこそが未来社会をきりひらくという「階級闘争の理論」を主張します。このテキストでも、第1部ものの見方・考え方(哲学)、第2部資本主義経済と暮らし(経済学)、第3部たたかいと社会進歩(階級闘争論)となっています。

 マルクスやエンゲルスが描いた19世紀資本主義社会の現実は、21世紀の日本でも世界でもあらわれています。だからこそ、かれらの著作がいまでも世界中で読まれているのです。それほど、資本主義社会の矛盾が深刻なのです。今日の労働者や市民がぶつかっている諸問題、時代の課題を考えるうえで、かれらの理論と思想はいまでも有効です。時代をこえるたいへん魅力的な思想家たちでした。

 マルクスとエンゲルスは、現実とたたかい、人びとの解放を願いながら、問題の本質を深く考え、解決の方向をあきらかにする態度を一貫してとっています。そこには真理を究明しようとする「科学の目」と、困難な現実を打開しようとする「変革の精神」が満ちあふれていたのです。私たちが科学的社会主義の基礎理論を学ぶうえで大切なことは、かれらの個々の言説を絶対化するのではなく、この「科学の目」と「変革の精神」を吸収することにあります。9か月の学習で、ぜひこの科学的社会主義の真髄ともいえる「科学の目」と「変革の精神」を学びとっていただきたいものです。

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  3 どのように学べばよいか  


 勤通大の学習は、計3回のテストと通信を使い、約9か月間とりくみます。勤通大に入学されたみなさんは、仕事や活動などで忙しすぎて学習する時間がとれないと悩んでいる方もおられるにちがいありません。いまの世の中、学習によって「科学の目」を鍛え、みずからが確信をもつことが重要です。学習する時間をとること自体がたたかいでもあります。学習する計画を立て、毎日、あるいは毎週、少しでも学習する時間をとり、それを習慣化することが必要です。

 勤通大は独習が大切ですが、同時に集団学習がきわめて重要になっています。職場や地域の受講生たちと、話し合い、交流しながら学習することが大きな効果を発揮します。集団学習のなかで、励まし合い、支え合ってこそ学習の内容をたしかなものにするにちがいありません。集団学習の仲間がいないと思っても、近くの学習組織や労働者教育協会に連絡をとれば、受講している仲間が紹介され、さまざまなサポートを受けることができます。

 マルクスは、「学問にとって平坦な大道はありません。そして、学問の険しい小道をよじ登る労苦を恐れない人々だけが、その輝く頂上にたどりつく幸運にめぐまれるのです」(『資本論』序文)とのべています。みなさんが、この「山登り」に挑戦されることを心から期待いたします。

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【解説】新・基礎理論コースの特徴と魅力

【リニューアルした基礎理論コースで学びましょう】
  ①学習の出発にあたって
  ②なにを学ぶか
  ③どのように学べばいいか
【解説】新・基礎理論コースの特徴と魅力
  ①ものの見方・考え方
  ②資本主義経済と暮らし
  ③たたかいと社会進歩
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  第1部 ものの見方・考え方 

 基礎理論コースの全体をつうじて科学的社会主義の理論を体系的に学びます。「科学的」とは、資本主義社会の現実から出発して、資本主義社会の矛盾とそれを解決する仕方を合理的に探求することです。そしてマルクス・エンゲルスのいう「社会主義」とは、働く人間が社会の主人公となり、すべての個人の自由な発達をめざし、人間の平等を追求して、人間が相互に協力しあう社会です。科学的社会主義とはこのような人間解放の理論です。

◆人間とは何かを考える


 第1部「ものの見方・考え方」では、第1章で「人間という存在」を考えます。ここでは、まず、自然と生命の進化のなかから人間が登場したことを論じます。そして、「猿が人間になるにあたっての労働の役割」を現代の人類進化論の成果をふまえて明らかにします。この第1章は、「唯物論」とは銘打ってはいませんが、人間が自然のなかから生まれ発展してきたことは、唯物論を学ぶうえで重要な基礎です。そして、人間は自然的存在であるだけでなく、社会的存在であり、意識をもつ精神的存在です。このような人間が歴史的に発展してきました。こうして、労働し、社会をつくり、意識をもって行動しながら、歴史をつくる人間のイメージをもつことが、「ものの見方・考え方」を学ぶ基礎になります。

◆唯物論と観念論


 第2章で「唯物論と弁証法」を学びます。哲学は、「神話的世界観」を克服した「合理的世界観」です。哲学はまず唯物論として登場しました。そして世界史の発展のなかで、それぞれの時代にふさわしい「唯物論」と「観念論」とが論争してきました。これが「哲学の根本問題」です。
 世界の根源は物質であるという唯物論の主張は、科学の発展や、意識と脳の関係などから明らかです。他方で、観念論も新しい展開をとげています。神のような精神が世界の根源であるいう「客観的観念論」や、自我を根源とする「主観的観念論」だけでなく、20世紀には「相互主観性」の観念論も登場しています。それは、「科学の内容も科学者たちの合意だ」、「人間相互の合意こそが真理だ」という主張です。主観相互の合意を世界の根源とし、真理の基準とするのです。また、さまざまな観念論が社会的につくられています。このような観念論と対抗できる唯物論の理解が必要です。今日の「ポスト真実」を克服する唯物論の真理論も必要です。

◆マルクスの変革の哲学


 第2章では、唯物論の発展として「マルクスの新しい唯物論」も論じます。ここでは、今日までのマルクス研究の成果も生かして、人間の主体的実践(労働と社会的実践)を唯物論的にとらえるマルクスの「変革の哲学」を明らかにしています。この新しい唯物論と、マルクスの弁証法や史的唯物論が結びついています。

◆マルクスの弁証法


 「弁証法」の起源は古代にあります。近代的な弁証法は、近代科学の発展と結びついた分析的方法の意義ふまえつつ、その問題点を克服するものとして、ヘーゲルやマルクスによって発展させられました。マルクスは弁証法を、「現実の肯定的理解」のうちに同時に「否定的理解」を含み、古い現実の「没落」と新しい現実の「発展」をとらえる「批判的・革命的方法」として論じました。

◆認識・実践・価値


 第2章では、人間の認識と実践の結びつきや、自由の意味を考えます。また、なにが「よいか・悪いか」という「価値」の問題を取りあげます。そして近年、市民と野党の共闘のなかで「個人の尊重」・「個人の尊厳」が語られていることもふまえて、「人間の尊厳」について論じます。

◆労働から社会を考える


 第3章「人間の社会とその歴史」で史的唯物論を論じます。ここではまず、人間の生活をつくる労働の意義を、「人間と自然との物質代謝」という視点からとらえます。同時に、資本主義社会における「疎外された労働」を論じます。「疎外」という言葉は難しいですが、人間が労働によって人間らしい豊かさを失うという、今日の重大な問題です。第2部の経済学での「労働の搾取」と結びつけて学んでいただきたいと思います。

◆社会のしくみと歴史


 そして、社会のしくみをとらえるための基礎概念である「生産力と生産関係」、「土台と上部構造」、「階級と国家」、「階級闘争」などをわかりやすく説明します。また、人間社会の歴史を、原始共同体から階級社会へ、そして階級社会である奴隷制、封建制から資本主義社会への発展とともに、資本主義社会の矛盾を明らかにします。ここでは、労働者の搾取や格差の拡大とともに、自然環境破壊の問題を重視して、資本主義社会の変革の必然性を論じます。さらにここから、階級のない社会主義・共産主義の未来社会への展望を論じます。

◆未来社会を考える


 これまで未来社会論は、第3部の階級闘争論の中で学んでいましたが、今回のテキストでは、科学的社会主義の哲学でも経済学でも、それぞれの分野から未来社会論を論じます。哲学では、社会主義・共産主義の社会こそが人間の自由・平等・協同を実現する社会であることを明らかにします。このような展望をもちながら、第2部の経済学、第3部の階級闘争論を学んでいただきたいと思います。
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  第2部 資本主義経済と暮らし 


 現代経済では多くの矛盾が累積し、先の見えない閉塞感が蔓延しています。勤信大基礎理論コースでは、その閉塞の根源にある資本主義経済のメカニズムを、「科学の眼」によって根本から明らかにするところに特質があります。

◆資本主義分析の出発点――市場経済、労働力商品


 4章、5章は資本主義経済の基礎理論で、「資本主義経済とは何か」そもそも論から解き明かされます。
 すべての科学において、出発点はきわめて大切です。4章では、日常生活で誰もが目にする商品の分析から始まります。ここに資本主義経済を分析する重要な出発点があります。商品の価値が抽象的人間労働の量によって決まることは、科学的経済学研究の土台です。あらゆるものが商品になってしまう時代、そうした商品経済(市場経済)の特徴の分析は、私たちが生きる現代の新自由主義の時代を考える上でも有益です。
 次に私たちの労働力までが商品化している資本主義の特徴が明らかにされます。私たちの賃金(労働力の価値)は何によって決まるのでしょうか。賃金は成果や実績で決まるものではなく、また景気に左右されるものでもなく、他ならぬ労働力の再生産費であることを読者は学ぶことになります。賃金=生活給であることを学ぶことは、春闘を闘い、最賃時給1500円運動を展開する上での重要な礎になるでしょう。

◆利潤はどこで生み出されるか――<搾取>の解明とその意義


 5章は、資本主義経済のなかで儲けがどこから生まれるかの解明が主題です。それは流通ではなく生産の現場で、労働者の必要労働(労働力再生産費)以上の剰余労働(剰余価値)が資本家から搾取されていることが明らかにされるのです。搾取の典型的な方法は、長時間労働と労働強化です。日本の異常な長時間労働、悲劇的な過労死・過労自殺の原因が、搾取論によって科学的に明らかにされます。搾取は、賃金闘争、労働時間短縮闘争を支える理論的武器です。
 加えて、現代日本における大企業の巨額の内部留保の根源は、勤労者の剰余労働の固まりです。そのことを把握することは、大企業に「内部留保の還元」を求める現代の労働運動、社会運動に重要な理論的基礎を提供するはずです。

◆貧困は自己責任か


 資本主義は、労働者の暮らしに何をもたらすのでしょうか。現代、貧困問題が社会問題になっています。貧困の当事者の多くが、そして社会もまた、貧困は自己責任だと考えています。しかし勤通大は、ここでも真の原因を問います。そして貧困の根本原因は、資本蓄積(拡大再生産)によって非正規や失業が生み出され、一方の極に一部の大企業と富裕層、他方の極に膨大な貧困が生み出されることを、解明しています。このように貧困は自己責任ではなく、(資本主義)社会の責任です。労働組合は正規も非正規も、そして失業者もともに反貧困の方向に団結する必要性を学ぶことができます。勤通大は受講生に「力となる知」を提起しているのです。

◆恐慌の原因と、資本主義の基本的矛盾――資本主義は永遠か


 こうした資本主義は、果たして永遠に続くのでしょうか。基礎コースでは、恐慌の原因の解明によって、その問いに応答します。あくなき利潤追求、生産のための生産によって、過剰生産恐慌が不可避となるのです。資本主義は飛躍的に生産力を高めるがゆえに、「生産と消費の矛盾」を免れることができません。資本主義生産の「深奥の矛盾」です。
 剰余価値の生産を求めて、生産力は無制限に発展しますが、生産手段が私的資本主義的に所有されている狭い生産関係のもとでは、生産力の高まりを計画的に制御することはできません。つまり、利潤追求が推進力になって生産のための生産に突き進み、この生産を社会的に制御できないのです。これは資本主義の基本的矛盾です。
 上記の点を認識することは、90年代以降、貧困の拡大と長期不況にあえぐ現代日本経済、そして世界経済の現段階を考える上でも、重要な示唆を与えるに違いありません。

◆変革主体の形成


 今回の新テキストの特徴は、資本主義の仕組みと同時に、それを乗り越えて新しい社会をつくる変革の担い手が形成される過程が理論的に明らかにされていることです。製造業だけではなく、広範なサービス労働、福祉・医療労働、公務労働の担い手たちが資本主義の社会的分業の広がりの中で、変革の担い手として陶冶されていくことが明らかにされています。そうした広範な労働者の闘いこそが、労働時間短縮や賃上げを勝ち取る原動力になります。資本主義の基本的な仕組みの学習のなかに、変革の担い手論を学ぶことができる点に、勤通大新テキストのもう一つの魅力があります。

◆歴史のなかの現代資本主義――独占資本主義、帝国主義、国家独占資本主義


 第6章では、これまでの基礎理論の上に、現代資本主義論が展開されます。まず歴史の中で現代資本主義の位置が叙述されます。資本主義の発展の中で独占資本主義、帝国主義が生み出され、20世紀の前半、二つの世界大戦が引き起こされました。資本主義の矛盾が、世界恐慌という形態で爆発しました。さらに1929年世界恐慌を契機に、国家介入によって資本主義を支える国家独占資本主義の段階に入りました(ケインズ主義政策)。第二次世界大戦後、日本を含む欧米先進国において、ケインズ政策の下での未曽有の高度経済成長が実現します。

◆1980年代以降の、現代資本主義の変質


 しかし1974-5年不況を契機に、先進国中心に高度経済成長が終焉しました。ケインズ主義政策は行き詰り、かわりに「市場経済万能論」としての新自由主義イデオロギーが台頭します。そして1980年代以降、現代資本主義は大きく変質します。新テキストの特質は、この時代の転換を重視し、グローバル化、ICT、金融肥大化、そして新自由主義をキーワードに現代資本主義の展開を特徴づけたことです。資本による無限の利潤追求、その結果、地球全体を市場とする巨大なグローバル多国籍企業が台頭しているのが現代の特徴です。この時代は、資本主義のつくりだした生産力水準が新たな段階に達した時代でした。昨今のAIの発展もその典型です。そして同時に、世界的に労働運動や社会運動が、反動攻勢にさらされた時期でもありました。その困難は、今も続いています。
 日本も、90年代以降、多国籍企業化が進み、新自由主義的構造改革の嵐が吹き荒れます。それによって日本型雇用が縮小し、非正規化と長時間労働が拡大します。今日の世界的な格差貧困の拡大、長時間過密労働(ブラック企業)、長期停滞、金融危機などの諸問題は、こうした現代資本主義の帰結です。日本の場合、「対米従属とルールなき経済社会」が、特殊に勤労者を困難に追いやる根源となっています。

◆現代における、資本主義の限界


 テキストでは資本主義の現段階を解明することをとおして、新自由主義と決別する新たな社会構想を提示しています。そして新テキストがラディカルなのは、こうした新自由主義の行き詰まりの背後に、より根本的な、資本主義の限界を見出していることです。格差貧困、経済危機と同時に、深刻な地球環境破壊は、利潤第一主義の資本主義の限界を示しています。「資本主義は永遠に続く」という強固なイデオロギーは、現代資本主義の叙述のなかで最終的に打ち砕かれることになるでしょう。

◆社会主義への展望と民主的改革


 こうした資本主義の限界という歴史認識の上に、新テキストでは、ポスト資本主義の新たな社会――社会主義(アソシエーション)を提起している点が重要です。そして当面の資本主義の民主的改革、民主的規制の積み重ねこそが、そうした資本主義を乗り越える土台となることが叙述されます。日本の場合は「対米従属とルールなき経済社会」を変革することが当面の重大課題です。その担い手は、労働者と広範な国民諸階層の共同です(変革論の詳細は3部を学んでください)。
 閉塞の根源を明らかにし、「もう一つの道」があることを骨太に指し示す経済学基礎コースは、働きながら、時代認識をきたえ、ラディカル(根源的)にものを考え行動する人々にとって最良の政治経済学テキストとなることでしょう。
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  第3部 たたかいと社会進歩 


 第3部は、社会発展の原動力である階級闘争の理論を学びます。階級闘争の理論は社会変革の実践の科学です。実践の科学とは、これまでの様々なたたかいの積み重ねを総括し、教訓と法則を整理したものです。これを理解しないと、いくら一生懸命に活動しているつもりでも、社会の矛盾を根本的に解決し、展望を切り開くことが出来ません。

◆20世紀論と21世紀の課題


 第7章では、今の時代が世界史的にどのような時代であり、私たちがどのような歴史的課題に直面しているかをあきらかにしています。そのうえで、よりよい社会をつくるための方法と課題を学びます。第1節では、20世紀が核戦争の危険や地球環境の危機など「人類の生存」の危機とたたかいながら、人類史の画期的な前進が見られたことをあきらかにします。なかでも、16世紀以来の植民地支配の終焉という人類史的変化が生まれたことを重視し、さらに、自由権と社会権の結合に見られるように民主主義と人権が飛躍的に発展したことを説明しています。そのうえで、こうした20世紀の大きな人類史的変化が、新たな展開と発展をもたらし、私たちが生きている21世紀にどのような課題を提起しているかを学びます。それは、核兵器廃絶と地球環境問題の解決、国際的な人権保障とジェンダー平等の実現、平和のルールと地域共同体の構築、テロと地域紛争の解決などであり、最後に貧困問題を解決できない資本主義の限界を乗り越えることが21世紀の課題になっていることが明確にされます。

◆現代国家の支配のしくみと現代民主主義


 第2節では、現代の変革を考えるうえで重要な現代国家と支配のしくみが解明されています。とくに高度成長期から、今日の「新自由主義」路線段階において、現代国家の支配のあり方がどのように変化したのか、メディアや学校教育を利用する支配方法がどのような特徴を持っているかが分析されています。さらに第2節では、私たちの生活や運動のよりどころである現代の民主主義と人権の問題を深めています。人権とは何かが説明され、歴史のなかでの人権の発展(近代的人権から現代的人権へ)が説明されます。

◆労働者階級と現代の社会変革の特徴


 第3節では、現代における労働者・国民のたたかいに関する基礎理論があきらかにされます。現代の変革の主な担い手である労働者とは何かが説明され、その労働者の運動が現代の階級闘争の中心であることがあきらかにされます。またその階級闘争の主な担い手である労働者階級の階級的自覚の形成が民主主義と人権の理解と結びついて可能になることを学びます。
 そして現代の社会変革が多数者革命の特徴を持ち、議会を通じる変革であり、統一戦線こそが変革の推進力であることが説明されます。そのうえで、発達した資本主義国における社会変革は、社会の矛盾を押し隠し、その表面化を抑える支配のシステムが整備されており、きわめて複雑で困難をともなっていることを学びます。矛盾が激しくなっても、自動的には社会の変革につながりにくいことがあきらかにされます。したがって、発達した資本主義国の変革は、こうした支配のシステムの影響を克服する長期の粘り強い組織的たたかいが決定的に重要になっていることが強調されています。
 さらに労働者階級の階級闘争の重要な分野として、労働組合運動の基本原則が説明されます。そして現代の多様な社会運動を「領域」「階層」から整理し、最後にこの社会運動と労働運動の関連があきらかにされます。

◆日本国憲法と戦後日本の支配体制


 第8章では、日本がどのような現状に置かれているか、それをどのように変革していけば良いかを学びます。第1節では、私たちの生活とたたかい、政治変革のよりどころである日本国憲法の特徴と意義について、戦前の日本社会、支配体制との比較や制定過程をふまえて学びます。第2節では、対米従属と財界・大企業本位の戦後日本社会の支配のしくみがどのようにつくられ、どのような特徴を持っているかが説明されています。とくに対米従属の要である日米安保体制を「基地国家日本」「日米共同作戦」「日米経済協力」の3つの角度から具体的に分析しています。また、異常な大企業本位の日本社会の特質を60年代から80年代の経済成長、90年代の多国籍企業への転換と「新自由主義」的構造改革への経済のあゆみを簡潔に整理しながらあきらかにしています。

◆日本社会の民主的変革


 第3節では、日本社会を民主的に変革していく道すじと展望について学びます。当面の改革である「資本主義の枠内の変革」、簡潔に言えば、非核・非同盟の民主主義日本と「ルールある経済社会」の実現が、なぜ民主主義革命なのかが説明されます。またこの変革を推進する民主連合政府といま私たちが求めている野党連合政権との関連が整理されています。
 こうした政治や社会の変革は、統一戦線の力で行われます。この統一戦線の結成に向けて、どのようなたたかいや努力が行われているかを、1970年代後半から今日までの、労働運動や社会運動の歴史的歩みを中心に検討し、その教訓を学びます。
 最後に、政治変革のプロセスとして、2つのことが指摘されています。1つは、当面する民主的変革の進展のなかから、圧倒的な国民的合意にもとづき、次の社会発展として社会主義が日本でも課題にのぼってくるにちがいないことが指摘され、その意味で、資本主義の枠の中での民主的改革と、資本主義に替わる社会主義社会の実現、という大きな2つの目標、二重の歴史的見通しをもつことが大切であると強調されています。
 もう一つは、グローバルな視点に立つことの重要性です。とくにアジアとの関係の重要性です。いまの政治や経済の現状から見ても、日本社会の変革にとって、アジアにおける「平和のルール」と民主的国際秩序の構築がきわめて大切になります。アジアの「平和のルール」と民主的国際秩序のなかでこそ、日本の平和と民主的改革、そして社会主義にむけての変革が可能になることが強調されています。

◆今のすべてのたたかいが未来社会の「形成要素」


 第9章では未来社会論を学びます。これまでのテキストでは、未来社会論は階級闘争論のなかで簡単に扱っていましたが、今度の新テキストでは、哲学、経済学でもそれぞれの立場から未来社会論を論じながら、階級闘争論の最後に第9章として全体をまとめる形で説明しています。第1節では、未来社会は遠い先の話ではなく、いまの現実と密接に関連していることが説明されています。労働者や国民は、格差と貧困のなかで大変な生活を余儀なくされ、暮らしと権利を守るために「ルールある経済社会」を築くために様々なたたかいいを行っています。それは大幅賃上げと全国一律最低賃金制の実現、労働時間の短縮、暮らしを支える社会保障制度の改革、両性の平等と同権などに示されています。ここで重要なことは、こうしたたたかいによる改革によって「ルールある経済社会」が実現されれば、その成果の多くが未来社会に引き継がれていくことです。マルクスは、資本主義社会におけるたたかいの成果は、新しい社会を形づくる要素、「新しい社会の形成要素」として継承されると述べています(『資本論』第1巻)。このように、いま行われている皆さんのたたかいは、「ルールある経済社会」の成果になり、やがて未来社会の「形成要素」として継承され、発展していくことになります。この意味で、未来社会はいまと遠く離れた先の話ではなく、今日の皆さんのたたかいは、すべて未来社会に密接に関連しているのです。

◆生産手段の社会化で社会はどのように変わるか


 第2節では、社会主義的変革の中心が生産手段の社会化にあり、このことによって社会がどう変わるかを説明しています。資本主義の矛盾を根本的に解決し、「利潤第一主義」から解放されるには、人間による人間の搾取を廃止しなければなりません。そのためには、経済の土台で、生産手段の私的所有をやめて社会化を実現しなければならないのです。生産手段の社会化とは、生産手段の所有、管理、運営を生産者の手に移すことです。生産手段の形態は、情勢やその社会の伝統などで多様な形になりますが、一番大事なことは新しい社会では「生産者が主役」という原則が貫かれることです。搾取がなくなることにより、労働時間が抜本的に短縮され、一人ひとりの人間的発達が保障されること、浪費や無駄をなくして生産力が飛躍的に発展することがあきらかにされています。
 こうした未来社会の特質は、「各人の自由な発展が万人の自由な発展の条件であるような協同社会」であり、それを簡潔に言えば、人間の自由、人間の解放です。未来社会のキーワードは「人間の自由」なのです。

◆未来社会への過渡期の特徴


 第3節は、未来社会への道筋=過渡期の学習です。過渡期を社会的過程と政治的過程に区別し、前者では「環境と人間」をつくりかえ、「生産の新しい組織」をつくり出すことが基本的課題になります。後者では、労働者階級の解放をめざす労働者階級の国家を樹立することが基本的課題になります。こうした民主的国家の後ろ盾のもとで、自由な生産者の「協同」という新しい人間関係による「生産の新しい組織」ができあがると、国家の後ろ盾がなくても社会が自分の力で発展することが可能になり、国家を必要としない歴史的段階になり、国家の死滅が始まります。
 このような社会主義にむけてのどのような改革も、国民的合意に基づいて段階的に行われることを学びます。

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勤労者通信大学 2020年受講生募集要項 

団体名 勤労者通信大学
住所 〒113-0034
東京都文京区湯島2-4-4
平和と労働センター5階
電話番号 tel. 03-5842-5644
Fax 03-5842-5645
メールアドレス kin@gakusyu.gr.jp
お申込み方法 以下をコピーして、メールかFAXでお申込みください。
お電話でもお問合せできます。
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◆件名 ホームページより
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●ご希望の内容
 ( )勤労者通信大学の資料を希望します。
 ( )勤労者通信大学を受講します。
●氏名(ふりがな)
(                      )
●個人 or 所属団体、職場名
(                      )
●教材お届け先の住所
 ( )自宅
 ( )職場・組合
(〒       )
(                      )
●電話(携帯可)
(                      )
●ご希望のコース
 ( )基礎理論コース 15,000円
 ( )入門コース   8,000円
 ( )憲法コース   10,000円
 
開校 2020年度4月開校。
新年度生募集中です。
テストと通信
標準学習期間 
テスト 年2回(基礎理論コースは3回)
通信 年2回(基礎理論コースは3回)
標準学習期間 6~9か月(目安)
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